2013 年 56 巻 1 号 p. 24-30
48歳女性.29歳時に口渇,多飲が出現した.30歳初診時の空腹時血糖314 mg/dl,HbA1c 13.1 %(NGSP)で2型糖尿病と診断し,高血糖是正のため,インスリン治療を開始した.糖尿病網膜症はなく,正常アルブミン尿であったが,腎生検で糖尿病性糸球体硬化症を認めた.以後,HbA1c 5.4-7.1 %であった.35歳頃単純網膜症,微量アルブミン尿を認めた.アイオヘキソール静注法にて測定したGFRは127.9 ml/分/1.73 m2であった.36歳頃からHbA1c 8-10 %と増悪し,顕性蛋白尿を認めた.39歳時通院自己中断後にネフローゼ症候群,血圧上昇を認め,GFR 75.0であった.以後血糖コントロールは良好に推移したが,43歳時のGFRは41.8で,43歳頃に血清クレアチニンは2.0 mg/dl以上となった.糖尿病腎症(腎症)に対し,食事療法,レニンアンジオテンシン系抑制薬などの多角的治療を継続し,透析導入となった.長期間の経過を追え,腎症の経過を知る上で貴重な1例と考えた.