糖尿病
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症例報告
ミトコンドリア遺伝子T3308C変異と心筋ミトコンドリア形態異常を認めた糖尿病の1例
荒木 里香町野 由佳中嶋 寛谷川 高士中谷 中伊藤 正明矢野 裕住田 安弘
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2014 年 57 巻 3 号 p. 181-187

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抄録

症例は37歳の肥満男性で,25歳時に糖尿病・高血圧,31歳時に心不全・腎不全,36歳時に末梢動脈疾患を発症した.家族歴では,兄に高血圧と肥満,(母方)叔母に糖尿病と肥満,(母方祖母方)大叔母に糖尿病がある.37歳時に,糖尿病及び肥満の精査加療目的で当科へ入院した.血清Cペプチド0.21 ng/mlと内因性インスリン分泌は低下し,糖尿病慢性合併症の進行と動脈硬化性疾患を認めた.心臓超音波検査では全周性左室肥大と左房・左室拡張,心筋細胞の電子顕微鏡像ではミトコンドリア形態異常が認められた.末梢白血球のミトコンドリア遺伝子検索では,NADH dehydrogenase subunit 1遺伝子領域にT3308Cホモプラスミー変異が検出された.本例は,我が国で初めてミトコンドリア遺伝子T3308C変異が認められ,糖尿病や高血圧,心疾患の病態への関与が推測される貴重な症例と考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本糖尿病学会
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