46歳の主婦が血糖コントロール不良のため当科に入院した.患者には肥満歴と過体重児の出産歴があり,36歳時に高血糖とGAD抗体陽性で1型糖尿病と診断され,3カ月後に強化インスリン療法が開始された.入院時検査でインスリン分泌能は低下していたがなお残存し,グルカゴン負荷に対する血中C-ペプチド濃度は維持されていた.家族は2型と考えられる糖尿病の集積家系であり,HLA class II serotypeはDR15のhomozygote,DR-DQ genotypeは日本人1型糖尿病疾患抵抗性haplotypeのheterozygoteと判明した.本例は,2型糖尿病の臨床的表現型と濃厚な糖尿病家族歴を持つにもかかわらず膵島自己免疫を示し,同時にHLA DR-DQ領域に1型糖尿病への強いprotective haplotypeをもつまれな糖尿病例であり,その病態と遺伝的背景が興味深い.