2015 年 58 巻 5 号 p. 329-335
症例は79歳女性.64歳時に2型糖尿病と診断され,経口糖尿病薬を開始されるもHbA1cは8-9 %と血糖コントロール不良であった.73歳時,発熱・下腹部痛・腰痛・全身倦怠感及び食欲低下が出現し入院.子宮留膿腫と診断され腹式子宮単純全摘術,両側卵管卵巣摘出術,洗浄ドレナージを行うとともに,強化インスリン療法で厳格な血糖コントロールを行った.炎症反応陰性化しインスリン離脱して退院したが約2か月後に右腸腰筋膿瘍,1年後に左腸腰筋膿瘍,4年後に右腸腰筋膿瘍,6年後に左腸腰筋膿瘍と,両側性の腸腰筋膿瘍を相次いで繰り返した.近年,腸腰筋膿瘍は画像診断の進歩や高齢化に伴い増加しており,なかでも糖尿病合併例は30-60 %と高率である.しかし,我々が調べた限り両側の腸腰筋膿瘍を相次いで起こした報告はなく,婦人科領域の感染巣から腸腰筋膿瘍に至った報告も計3例のみであるため,文献的考察を加えて報告した.