2017 年 60 巻 4 号 p. 279-287
奈良県では毎年新規に約200人の糖尿病患者が腎障害の進行により人工透析導入されている.本調査は奈良県における糖尿病患者の治療状況を明らかにし,糖尿病合併症(特に腎障害による人工透析導入)の予防対策に生かすことを目的として実施した.奈良県内の171医療機関において2013年8月1日から2014年7月31日の間に糖尿病で診療を受けた38,766例(平均年齢68歳,男性57 %)を解析した.平均HbA1cは6.7 %であったが,若年層においてHbA1c 8.0 %以上の割合が高値であった.推算糸球体濾過率の評価は92 %で実施されていたのに対し尿アルブミン定量の実施率は29 %と低く,尿アルブミン定量の実施には医療機関毎の診療特性が考えられた.糖尿病性腎症は35 %に認められ慢性腎臓病の合併は45 %において認められた.本調査を元に奈良県の糖尿病診療の質の向上,合併症の発症予防,進展抑制対策を講じていきたい.