2020 年 63 巻 1 号 p. 35-40
症例は39歳女性,20歳で2型糖尿病と診断され加療開始したが,血糖管理不良が続いた.腎症4期のため,避妊を指導していたが自然妊娠が成立.妊娠判明時HbA1c 6.8 %,血清クレアチニン値(Cr)1.66 mg/dL,eGFR 29 mL/min/1.73 m2であり,周産期合併症のリスクを十分に説明したうえで妊娠継続を強く希望し,入院および外来にて慎重に血糖・血圧管理を行った.妊娠34週に血清Cr値2.35 mg/dLまで上昇,また黄斑浮腫による視力低下,エコーで胎児発育不全を疑う所見も呈したため,帝王切開となった.児は1712 g,Apgar score 7/8点(1/5分値)の男児,新生児低血糖を認めたが形成異常は無く,児の経過は良好.わが国にて腎症4期で妊娠し分娩に至った症例の報告はほとんど無く,貴重な症例と考え報告する.