2020 年 63 巻 6 号 p. 399-404
症例は76歳男性.糖尿病罹病期間26年の2型糖尿病でインスリン治療中であった.「認知機能低下による血糖コントロール悪化」としてかかりつけ医より糖尿病教育入院目的に当院紹介受診となった.入院時HbA1c 9.1 %であり認知機能低下も認めた.入院後,血液培養にてStreptococcus mitis陽性,心エコーにて大動脈弁と僧帽弁に疣贅を認め,CT・MRIにて腎梗塞,多発脳梗塞を認めた.感染性心内膜炎と診断し,ペニシリンGによる内科的治療と外科手術により軽快した.退院時,認知機能は改善し,血糖コントロールもHbA1c 7 %台で安定した.高齢糖尿病患者は重篤な感染症であっても,認知機能低下や血糖コントロール悪化といった非典型的な症状が主訴となることも多く,その背景に感染性心内膜炎のような重大な感染症の合併も考慮し精査すべきであると思われた.