糖尿病
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委員会報告
「食品交換表」編集委員会報告~アンケート調査からみた「食品交換表」の現状と課題~
窪田 直人下田 誠也本田 佳子丸山 千寿子石田 均井上 達秀繪本 正憲田中 武兵中塔 辰明山口 宏横山 宏樹荒木 栄一宇都宮 一典綿田 裕孝
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2020 年 63 巻 6 号 p. 405-420

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抄録

糖尿病治療の基本は食事療法であり,糖尿病の成因や病期,老若男女を問わず,すべての患者が対象となる.「糖尿病食事療法のための食品交換表」(以下:「食品交換表」)は,難しい食事療法を指導しやすく,患者が指示された栄養量に見合った食事を好みに応じて自由に献立できるよう作成され,時代ごとの食生活環境に合わせこれまでに7回の改訂が行われている.第7版の累計発行部数は90万部を超え,多くの患者やその家族,医師やメディカルスタッフに活用されてきた.しかし近年,食材の流通,加工,保存技術の目覚ましい発達や,中食・外食等の食の外部化,食文化の国際化に伴う料理の多国籍化などが進み,日本人一人一人を取り巻く食環境は大きく変化し多様化をみせている.このような食生活環境の変化は糖尿病患者の食事療法にも大きく影響しており,従来の「食品交換表」の利用を困難にしつつある.そこで本委員会では,より実践的な食事療法を行うために何が必要か,現状と課題を調査すべく,学術評議員と栄養士会員を対象としたアンケート調査を実施した.調査期間は2018年6月6日~7月8日,対象者は学術評議員701名,栄養士469名,日本糖尿病学会ホームページ「My Page」を利用し,341名より回答を得た(回答率29.1%).最も使用されていた「食品交換表―第7版」では「必ず使用する」「よく使用する」が6割であったのに対し,「食品交換表活用編―第2版」,「糖尿病腎症の食品交換表―第3版」では「あまり使用しない」「全く使用しない」が7割を超えていた.「食品交換表―第7版」が使用しにくい理由としては,①難易度が高く,限られた時間の中で患者の理解を得るのが難しい,②食事の実態や指導したい内容との間に乖離がある,③視覚に訴える媒体を中心に他の資料が使用されている,ことが挙げられた.一方で「食品交換法―第7版」のTable 1~Table 6の分類は使用頻度が高く,このグループ分けが広く浸透しており,認知度の高さが伺えた.糖尿病に対する知識や理解,食事療法に対する意欲が乏しく調理を行わない中食・外食利用者や,情報化社会の進展により誤った情報等に左右されやすい対象者に栄養指導を実施する場面が多いことが推察された.食環境が多様化し超高齢社会を迎える中,中食/外食にも配慮した今まで以上に簡便でわかりやすい指導媒体の開発が求められていると考えられる.

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© 2020 一般社団法人 日本糖尿病学会
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