2023 年 66 巻 4 号 p. 254-263
症例は77歳男性.糖尿病の既往はない.横行結腸癌術後再発に対してX-1年10月より免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブを開始後,X年1月全身倦怠感,食欲低下,口渇多飲を主訴に当院を受診.随時血糖341 mg/dL,HbA1c 7.6 %,尿中ケトン体(2+),pH 7.341と糖尿病ケトーシスを認め,緊急入院となった.空腹時血清Cペプチド0.22 ng/mL,抗GAD抗体陰性であり,劇症1型糖尿病と診断した.またACTH値正常を伴うコルチゾール低値を認め,負荷試験を経て続発性副腎皮質機能低下症と診断した.さらに甲状腺機能低下症も認めた.強化インスリン療法,ヒドロコルチゾン,レボチロキシン投与を順次開始した.本例はペムブロリズマブにより3系統の内分泌障害をほぼ同時発症した極めて稀な1例である.内分泌学的免疫関連有害事象を管理する上で示唆に富む症例と考え,文献的考察を交えて報告する.