糖尿病
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インスリンによるアナフィラキシシーョックの1例
大根田 昭山家 啓丸浜 喜亮松田 精佐藤 宗彦但木 博
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1974 年 17 巻 2 号 p. 139-145

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抄録
インスリンのアレルギー反応には, 局所反応と全身反応があり何れも稀であるが特に後者は稀である.我々は, インスリンの静注により, アナフィラキショックを起こした症例を経験した.症例は63歳の家婦で, 7年前に糖尿病の診断を受け以来定足期にインスリンや経口剤の治療を受けている.入院1カ月前より右季肋部痛あり他の病院に入院し胆石症糖尿病の診断を受け, ノボレンテインスリン12単位を約3週間注射された.当科に入院後, 21病日にインスリン感度試験のためレギラーインスリン5, 1単位を静注したところ, 注射直後より, 血圧は下降し, 意識は混濁し, ショック状態となった.ノルアドレナリン, プレドニンの静注により, 25分後にはショック状態より回復した.その後の皮内反応では, ウシ, ブタ・インスリンに対しては強陽性を示したが, カツオインスリンに対しては極めて弱い反応を示すのみであった.1131ブタインスリンを用いた血漿中の結合抗体は, インスリンによるショック直前の血漿中には証明されず, また, 1ヵ月後に皮内反応が陽性を示した際にも結合抗体は認められなかった.このことは, 結合抗体とレアギン型抗体とは異質のものであることを支持する.本例は当科に入院中経口剤でコントロールされたが, 胆嚢摘出術に際してはカツオインスリンを使用して良好なコントロールを得た.従って, ウシやブタのインスリンにアレルギー反応を呈した症例に対して, カツオインスリンは試みるべき方法と考えられる.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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