糖尿病
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悪性インスリノーマにおけるStreptozotocinの臨床効果
大根田 昭松田 精丸浜 喜亮佐藤 宗彦山形 敞一後藤 由夫海野 清
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1974 年 17 巻 3 号 p. 240-247

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抄録
悪性インスリノーマに対してStreptozotocinを投与し, 臨床症状の改善がみられた1例を経験したので報告する.
患者は54歳の男子で.1964年に最初の低血糖発作がみられ, 以来時折同様の発作があったが.1969年12月に症状が増悪して, 山形県立中央病院に入院した.ここで悪性インスリノーマの診断をうけ, 東北大学山形内科に転科した.入院時, 心は著明に肥大し, 収縮期雑音を聴取し, 肝は5横指触知し, 左季肋部に腫瘤を触れた.空腹時血糖は40mg/dl以下を示し, 血漿インスリンは常時150μU/ml以上を呈した.動脈撮影法および腹腔鏡検査によって膵腫瘍とその肝転移が証明された.
そこでStreptozotocinを1週1回2gの静注投与を開始した.この投与後に, 低血糖の頻度が少なくなり, 必要とするぶどう糖の量も減少した.これと共に腹部の腫瘤は縮少し, 血中インスリンも約60μU/mlと低下しStreptozotocinは有効であった.Streptozotocinを投与すると毎回悪心, 嘔吐がみられたが, 投与を中止するには至らなかった, また小量の凝血塊が尿に混ずることがあったが一過性であった.Streptozotocin投与後は血漿中のbigインスリンが減少した.退院後2年を経過している現在では全身状態も良好で低血糖発作は殆どない.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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