糖尿病
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本邦における高滲透圧性非ケトン血性糖尿病昏睡症例の統計的観察
河西 浩一後藤 彰夫岡田 奏二石田 俊彦
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1974 年 17 巻 4 号 p. 316-327

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抄録

本邦において報告されている54例の高滲透圧性非ケトン血性糖尿病昏睡の集計的観察を行なった. 患者の年齢は4歳から85歳にわたっていたが, 全体の70.4%は50歳以上であった. 全症例の41%は発症までに糖尿病の既往歴をもたなかったが, 24%の症例では3年以上の精尿病歴を有し, なかには長期のインスリン使用患者もあった. 入院時の主な主訴または症状は著明な脱水に伴う症状と, 意識障害, 消化器症状, 循環不全や高熱であった. 昏睡の主な誘因は感染, 手術侵襲, ステロイド投与などのストレスと, 脱水をきたすいろいろな状態などであった. 8症例に尿中アセトンの弱陽性か痕跡を認めた. 54症例の血糖値の平均は1,019mg/dlであり, 49症例の血清ナトリウム値の平均は152.9mEq/lであった. 6例に低ナトリウム血症がみられ, 血漿CO2含量と血液pHの低下を伴っていた. 40症例の血中尿素窒素値の平均は82.7m9/dlであり, 38例の血漿滲透圧の平均は383.2mOsm/lであった. 治療としては多くの症例で100~400単位のインスリンとの補液がなされていた. 意識障害の持続時間は生存例, 死亡例ともにほぼ3日であった. 死亡率は25.9%であった. 回復症例の糖尿病の経過は良好で, 食事療法のみか, 少量の内服剤やインスリンでコントロールされた. 13例の剖検症例のうち11例に膵に糖尿病性の変化を, 4例に糸球体硬化症を, 5例に脂肪肝を認めた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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