1974 年 17 巻 4 号 p. 379-386
lipoatrophic diabetesの1例を経験し. その糖代謝, インスリン動態などを検討した.
症例は25歳の女子, 生下時より全身の皮下脂肪が少なく, 24歳時に糖尿病を発見された. 入院時, 全身の脂肪萎縮があり, 筋肉の輪郭は著明でacanthosis nigricans, 肝腫大, 糖尿病性網膜症, 腱反射の減弱, 振動覚の低下などが認められた. 尿糖陽性で, 耐糖能の低下を認めたが, ケトン尿はなく, そのほかの一般検査成績にも異常はみられなかった. 血清脂質と基礎代謝率は入院時には正常で, 次第に高値となった.
経口糖負荷試験時および, トルブタマイト静注負荷試験時の血漿IRI反応は過剰遅延反応を示した, トルブタマイド負荷試験およびインスリン負荷試験では血糖降下は殆ど認められなかった. 患者血漿をSephadexG-50カラムクロマトグラフィーにより分画したところ, 大部分が正常インスリンと同一の画分に回収された. 各種刺激に対する血漿成長ホルモンは正常範囲内の反応を示した.Louisの尿中インスリン拮抗物質は証明されず, 血中インスリン抗体価の上昇も認められなかった.
本症例をchlorpropamideにより治療したところ, 経口糖負荷に対する血漿IRIの分泌反応は一層過剰となった. しかし, トルブタマイドに対するIRIの追加分泌は認められなかった. なった. しかし, トルブタマイドに対するIRIの追加分泌は認められなかった.