抄録
摘出ラット肝を牛赤血球浮遊液にて灌流した肝灌流法により, 糖新生機能およびケトン体産生機能を指標として長時間絶食時 (72時間) におけるスルフォニール尿素剤 (tolbutamide) および外因性lactateの肝効果を検討した.
ウイスター系雄ラットを固形食にて飼育し, 72時間絶食後に肝を摘出し灌流に供した. lactateは灌流開始と同時に10mMの濃度で, tolbutamideは予備灌流30分後1.0mg/mlの濃度に添加した. 以後経時的に90分間にわたり採血し, 灌流液中のglucose, lactate, pyruvate, acetacetate, β-hydroxybutyrateを酵素学的に定量した. 得られた成績は以下の如くであった.
1) 外因性lactateの添加は全灌流時間にわたり肝糖放出を著明に亢進せしめたが, lactate無添加群では灌流開始後30分間観察されるにすぎなかった. このlactate由来肝糖放出は, tolbutamide添加で著明に抑制された. 2) 外因性lactateおよびtolbutamideには, それぞれ抗ケトン作用が示されたが両者の併用によるadditive effectは認められなかった. 3) lactate/pyruvate比の変動はtolbutamide添加の有無により差は示さなかったが, 添加lactateの利用率はtolbutamideにより著明に抑制された. 以上の成績よりtolbutamideおよびlactateの肝における代謝効果について考察を加えた.