1975 年 18 巻 6 号 p. 619-624
polyaminostyreneのジアゾニウム塩とインスリンを物理的に結合させたβ-naphthyl-azo-polystyreneinsulin (β-NAS-I)はペプシンやα-キモトリプシンなどの消化酵素に抵抗性を示し, かつインスリンの生物学的および免疫学的活性を保持している.かかる作用特性より本論文では, インスリン経口投与の可能性追求のための1手段として, β-NAS-1をウサギに経口的あるいは腸管内に投与し血糖と血清インスリンの動態を検討した.
1) インスリン懸濁液を150U/kgまで胃内に投与してもその効果は認められない.しかしβ-NAS-1を100-150U/kg投与すると血糖の低下および血清インスリンの上昇は有意に認められた.
2) β-NAS-1を100U/kg, 150U/kg空腸内に投与すると血糖値はそれぞれ前値の45%, 65%の低下を, 血漿インスリンの頂値も71μU/ml, 99μU/mlを示し, インスリン懸濁液投与時に比較しその効果は大であった.
以上polyaminostyrene系化合物と物理的結合したインスリンは消化酵素に抵抗性を示し, 腸管より吸収され作用を発現すると考えられ, インスリン経口投与の可能性を示唆しえた.