抄録
糖尿病の診断確定から3年以後の患者の生活状態を知るために, 1974年10月に7施設の症例について罹病歴3年以上のものを対象にアンケート調査を行った.調査表の回収率は64%で.記載事項の充分な1022例について検討し, つぎの成績を得た.
普通に仕事をしている, からだの調子がよい, 病気のために休むことがない, という予後のよいものは糖尿病が30, 40代に発病したものに多く, 反対に病臥中のもの, 病気のために1年の大半を休むという予後の不良なものは糖尿病が30歳以前に発病したものに多い.70歳以後に発病した例は当然のことながら日常生活に不自由を感じているものが多い.一般に罹病期間が長いもの程, からだの調子のよいものが少なく, 各種症状・愁訴の発現頻度が高くなり, また仕事のできなくなるものが多くなる.治療法別では食事療法だけのものは予後がよく, インスリン療法を必要としたものは予後が悪い.糖尿病患者の予後には, 発病年齢30歳を境にして大きな差異がみられる.この理由の解明は糖尿病の治療に大きな示唆を与え, また本症の分類や病態などの本質的な問題にふれるものと思われる.