糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
実験的糖尿病における脂質代謝異常の研究
とくに血清脂質およびLipoprotein Lipase活性について
桜田 豊三折茂 肇岡部 紘明野間 昭夫村上 元孝
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 18 巻 6 号 p. 643-647

詳細
抄録

Streptozotocin (St.) 80mg/kg静注によるラットの実験的糖尿病を作成し, St投与後4日目の血清脂質, heparin静注後のtriacylglycerol lipase (PHTGL), monoacylglycerol hydrolase (PHMGH) 活性および肝, 脂肪組織スライスからheparinによって遊出するtriacylglycerol lipase (TGL) とmonoacylglycerol hydrolase (MGH) 活性について検討を行った.
1) 実験的糖尿病の血清triacylglycerol (TG) および遊難脂酸 (FFA) は対照群に比し有意に上昇したが, リン脂質およびcholesterolは両群間に差は認められなかった.2) PHTGLおよびPHMGH活性はSt投与により明らかに低下した.3) 糖尿病群の組織由来のTGLは脂肪組織において著しい活性の低下が認められた.4) 一方, 糖尿病群のMGHについては肝由来の酵素活性が著明に減少していた.5) St投与による1, 2の変化はinsulinの同時投与により明らかに防止された.
以上のことから, St投学による実験的糖尿病ラットの血清TGの上昇は, 血中における中性脂肪分解酵素の活性の低下が一因をなし, この酵素活性の低下の原因としては, 糖尿病ラットにおける組織内の酵素の絶対量の低下と, 組織からの酵素の遊出障害があるものと思われる.またこの現象にはinsulinが何らかの影響をおよぼしていることが示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top