糖尿病
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若年発症糖尿病における網膜病変の実態
福田 雅俊三木 英司丸山 博
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1975 年 18 巻 6 号 p. 656-663

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抄録

20歳以前に発症したと推定される若年糖尿病症例約100例を対象に定期眼底検査を反復し, その1部34例には螢光眼底造影検査も実施して, その網膜病変の実態を調査した. 網膜症の合併率は37%, 発症時期は, 16-20歳, 糖尿病罹病6-9年が高率で, 最年少例は4歳, 罹病2年であった. 増殖型網膜症の合併率は10%で16歳以後, 罹病3-9年言に発症したものに多く, 最年少例は19歳罹病6年であった. これは成人糖尿病に比して全網膜症の合併率は有意に低率で, 重症網膜症の合併率はほぼ同率という結果である. また女子に高率であることは成人例より一層顕著であり, コントロール不良例に多いことは成人例と同じであった.
他方, 螢光眼底造影検査結果もその半数以上に異常螢光点, 螢光色素浸潤, 毛細血管からの血管外漏出および血管床閉塞野などを認め, 年齢, 糖尿病罹病期間の増加と共に高率化する点は成人の場合と同じであったが広範囲の血管床閉塞野と, 毛細血管以上の太い血管からの血管外漏出は認められなかった.
以上の結果は, 網膜症が血管閉塞性病変ではじまるという仮説に矛盾するものでなく, また若年糖尿病に重症網膜症の合併率が高いことも事実であるが, そのすべてが重症化するわけではなく, 16歳以後に要注意であり, コントロールをはじめ糖尿病自体の管理に配慮することが, その予防に連らなることを物語るものであった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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