糖尿病
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学童集団検尿により発見された小児糖尿病の経過と病態について
真野 敏明小島 知彦北川 照男
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1976 年 19 巻 1 号 p. 42-52

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抄録

約22万人の児童生徒の尿スクリーニングによって発見された無症候性の小児糖尿病の9例のうち6例についてその病態を研究した. 2例の糖尿病はいずれも15歳で肥満を認め, 体重は標準体重の122-204%(A群), 他の4例は6-13歳で, 体重は標準体重の76-100%(B群) であった. これらの6例にブドウ糖負荷試験, トルブタマイド負荷試験, インスリン負荷試験を行った. その結果, A, B群とも糖負荷後のインスリン分泌は低く, トルブタマイド負荷後のインスリン値はA群では2-2.5倍増加したがB群では平坦であり, 血糖下降はB群の1例を除いて緩徐であった. A群におけるインスリン負荷試験は, 血糖が, わずか60-65%に低下するにすぎなかったが, B群では15-36%にまで低下した.
B群の4例中3例に血清コレステロールの有意の上昇を認め, A群の2例に血清トリグリセライドとprebetaリポ蛋白の上昇を認めた.
これら6例の小児糖尿病の経過を12ヵ月間観察したところ, B群の1例がインスリン依存性となったが, その他の症例の耐糖能は悪化せずインスリン治療は必要としなかった. また, A群の2例は肥満の治療後に, 耐糖能が正常範囲にまで改善された.
これまで小児の糖尿病は急速にインスリン依存性となるといわれているが, 以上の結果から, 無症状の小児糖尿病の耐糖能は, それほど急速に低下するものではないように思われた. また, 尿糖検査による小児糖尿病の集団スクリーニングは可能で, 発病予防についての対策を立て得ることが示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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