糖尿病
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レンテ・インスリン及びグリベンクラマイド投与時における血中IRI動態の比較
Sulfonylurea剤の作用機序に関する1考察
福本 泰明市原 紀久雄垂井 清一郎
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1976 年 19 巻 2 号 p. 168-175

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抄録

未治療の成人発症糖尿病患者9例を, 食事療法単独, スルフォニール尿素剤 (グリベンクラマイド5mg/日を使用.以下SU剤と略), レソテイソスリン (16単位/日.以下レンテと略) で各々3日間治療し, その3日目の血糖, 血清IRIレベルの日内変動を比較検討した.なお, 各治療の問には4日間の間隔をとった.日内血糖曲線を積分して得られる血糖総面積は, 食事療法中4,245±669mg・h%, SU剤治療中3,317±384mg・h%, レンテ治療中3,177±552mg・h%で, SU剤及びレンテ治療により血糖はほぼ同程度下降した.
日内IRI曲線を積分して得られるIRI総面積は, 食事療法中187±24μu・h/ml, SU剤治療中296±65μu・h/ml, レンテ治療中267±43μu・h/mlで, SU剤またはレンテ治療により, 食事療法単独の場合に比し, 日内IRIレベルは有意に上昇した.SU剤治療中のIRIレベルは, レンテ治療中のそれに比し均しいか, ときにやや高い傾向を示したが, 推計学的には両者の間に差を認めなかった.
SU剤治療中の血清IRIは, 本来, 膵・十二指腸静脈を通じて分泌される内因性インスリンより成っている.末梢循環中の日内IRIレベルが, SU剤治療中とレンテ治療中で均しいとすれば, 門脈血中のインスリン濃度は当然SU剤治療中において高い筈である.肝臓がインスリンの主要な標的器官の一つである以上, 本実験で得られた所見はSU剤の血糖降下作用が, 少くとも短期間の観察においては, 大部分内因性インスリン分泌能の増強にもとずくことを強く示唆している.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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