糖尿病
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高滲透圧性非ケトン性昏睡の7例
老年者における特徴を中心として
上田 良成井藤 英喜白木 正孝大山 俊郎折茂 肇
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1976 年 19 巻 4 号 p. 562-568

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抄録

我々は老年者の高滲透圧性非ケトン性昏睡 (以下本症と略す) の7例を経験したので, その報告をして。老年者における本症の特徴について考察を加えた. 入院当初の診断で4例において脳卒中が疑われたことが特徴的であるが, 著明な脱水症状と異常神経所見を呈する場合には, 本症の可能性を考えて血糖値および血清滲透圧の測定をすることが大切である.自験例においては痴呆や発熱などでおこった意識状態の低下による糖尿病のコントロールの不足, 口渇感の減退, 飲食不十分, および発熱などが本症発症の要因になったものと考えられる. 意識障害の程度は昏迷から昏睡で, 血清滲透圧は343~410mOsm/lと高値を示した. また, 4例に痙攣が認められたが, 血管障害などの脳病変がすでに存在していたところへ, 血清滲透圧や血液粘度の上昇などの要因が加わって, 痙攣が発生したものと考えられる. 本症の治療は主にレギュラーインスリンと輸液によったが, 1例は輸液のみで回復した.予後については, 7例中3例が死亡した. 本症発症前の糖尿病の程度については, その治療に薬剤を必要とするような症例のほかに, 意識障害で入院してはじめて糖尿病と診断されるような症例もあった。

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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