糖尿病
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インスリン分泌におよぼす体位の影響 (続報)
金綱 隆弘長谷川 弘之中島 一益平海 良雄大高 剛千丸 博司牧野 邦雄高森 成之滝野 辰郎葛谷 覚元
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1977 年 20 巻 1 号 p. 82-89

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抄録

正常人では, ブドウ糖, トルブタマイドなどによるインスリン分泌刺激時のIRI反応は坐位に比べ右側臥位で強いことがわかった. そこで日常繁用される経口GTT時にこのように強いIRI反応をもたらす要因を追求するため正常者に以下の検討を行った.
1) 100g経口GTT30分後の胃排出能, 血糖の上昇, IRI反応はいずれも坐位より右側臥位で強くみられた. 2) 259静脈内GTT10分前にatropine (0.5mg), propranolo1 (5mg) などを投与すると坐位と右側臥位の間でIRI反応の差はみられなくなり, 一方pilocarpine (7mg), trimetoquino1 (0.1m9) などの前投与で両体位間の差がよくみられた. 3) 坐位において25g静脈内GTT10分前にatropine (0.5mg), pilocarpine (7mg) の前投与を行ってもIRI反応は無処置の場合とで差をみない.4) 25g静脈内GTT10分前にvasopressm (10単位) を投与すると坐位, 右側臥位共にIRI反応が強く抑制され, また坐位において耐糖能の低下が強くみられた. 5) regularinsulin (4単位) 静注後の血中IRIの減衰曲線は坐位と右側臥位の間で差をみない. 著者らは以前, 左側臥位100gGTTでは血糖上昇, IRI反応が遅延し, トルブタマイド試験では右側, 左側臥位共に強いIRI反応を認めている.
これらの成績から経口GTTのとき体位によるIRI反応の差をもたらす要因として, 胃排出機能, 副交感神経, 交感神経β受容体の関与が示唆された. 一方体位の差による膵血流量の差, インスリン分解能などは考慮する必要がないものと考えられる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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