糖尿病
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高濃度造影剤注入後急性腎不全を呈し剖検により腎乳頭壊死のみられた糖尿病の1例
竹越 忠美井村 優竹内 伸夫井端 孝義西野 知一野々村 昭孝
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1977 年 20 巻 5 号 p. 660-666

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抄録

糖尿病性三徴, 高血圧を有する糖尿病患者に排泄性腎孟撮影施行後急性腎不全となり剖検により典型的な腎乳頭壊死を合併した症例を経験したので報告した.症例は60才女子で15年前糖尿病を指摘されるもコントロール不良であった.昭和49年3月高血圧, 肺炎を併発し当科入院.糖尿病状態はセミレンテインスリン20単位でコントロール良好となる.昭和50年3月DIP施行し翌日より排尿困難をみとめ, 1週後より悪寒, 高熱, 肉眼的血尿, 乏尿, 白血球増多をみとめたため, 膀胱洗滌, 腹膜潅流を施行したが約5ヵ月後尿毒症により死亡した.剖検にて慢性腎孟腎炎と典型的な腎乳頭壊死をみとめた。輸出, 入動脈の動脈硬化性変化は高度であったが, 腎糸球体は皮質表層部では硝子化が強いが皮質深層部では殆ど硝子化はみとめられなかった.
本症例では高度の動脈硬化性変化があり, それに高濃度造影剤注入による腎孟撮影が腎乳頭部の虚血ひいては壊死発現に促進的に作用したものと推定された.糖尿病を有する患者では排泄性腎孟撮影など高濃度造影剤注入に際しては特に慎重を要するものと思われる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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