糖尿病
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糖尿病性ケトアシドーシスにおける赤血球解糖系の変動
特にホスホフルクトキナーゼ活性と2, 3-ジホスホグリセリン酸濃度の関連性について
桑島 正道河野 典夫市原 紀久雄垂井 清一郎
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1978 年 21 巻 10 号 p. 881-892

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抄録
糖尿病性ケトアシドーシスにおいて赤血球2, 3-ジホスホグリセリン酸 (2, 3-DPG) 濃度が減少し治療により回復することは良く知られているが, その減少機構および治療経過にそった赤血球解糖代謝についてはいまだ知られていない.そこで6例の糖尿病性ケトアシドーシス患者の流血中赤血球のすべての解糖系中間体 (1, 3-DPGを除く) とアデニンヌクレオタイド濃度を測定し, 治療前および回復期における解糖代謝の特徴を分析し2, 3-DPG濃度の変動機構を検討した.
(1) 治療前の糖尿病性ケトアシドーシス患者の赤血球では正常対照に比しフルクトースー6-燐酸は上昇, フルクトースー1, 6-二燐酸, ジヒドロキシアセトン燐酸+グリセルアルデヒドー3-燐酸, 2, 3-DPG, 3-ホスホグリセリン酸は低下している. (2) この解糖系パターソは先天性赤血球ホスホフルグトキナーゼ (PFK) 部分欠損症のそれと極めて類似しており, 糖尿病性ケトアシドーシスに見られる2, 3-DPG濃度の低下はPFK活性の阻害にもとつくと判断される. (3) 糖尿病性ケトアシドーシスにおける赤血球PFK活性の阻害は主として血漿水素イオン濃度の上昇にもとついており, β-ヒドロキシ酪酸, アセト酢酸, インスリン, バルミチン酸などの濃度変動によるものでないことを浮遊赤血球を用いたinvitro実験系で明らかにした. (4) ヒト赤血球PFK活性が水素イオソによって阻害され, β-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸によって影響を受けないことは精製酵素を用いた実験系でも確認された.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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