糖尿病
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胃全摘ラットのグルカゴン分泌動態について
千葉 勉門脇 誠三井上 喜通森 幸三郎後藤 康生田港 朝彦清野 裕松倉 茂西本 政功野沢 真澄
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1978 年 21 巻 10 号 p. 901-906

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抄録
胃切除後の糖代謝異常におけるグルカゴンの役割りを検討する目的で, 胃全摘ラットに経口ブドウ糖負荷を施行し, その時の血糖, インスリン (IRI), グルカゴン (IRG), total glucagon (GLI) 反応を観察した.
Wistar系雄性ラットにBillroth第1法による胃全摘を施行し, 1週間後に抱水クロラール麻酔下にてカテーテルを経口的に十二指腸まで挿入し1そこより29/kgのブドウ糖を注入した後経時的に採血した.また対照として正常ラットおよび十二指腸痩を作成したラットを用いた.ブドウ糖負荷は正常ラットでは同様の方法でカテーテルを経口的に胃内に挿入して行い, 十二指腸痩ラットでは十二指腸痩よりカテーテルを直接十二指腸に挿入して行った.
胃全摘ラットの血糖値は糖負荷前, 負荷後ともに対照の2群に比し著明に上昇していた (P<0.01).またIRIは全経過を通じて3群の間に有意差は認められなかった (P>0.05).
さらに胃全摘ラットのGLIは前値705±138.5pg/mlで糖負荷60分後には2,106±330.0pg/mlとなり全経過を通じて他の2群に比し著明な高値を示した (P<0.02).一方IRGも前値288±47.1pg/mlで糖負荷15分後には774±137.9pg/mlと他の2群に比し著明な高値であった (P<0.01).
以上の事実より, 胃全摘ラットのGLIおよびIRGの過剰反応が単にブドウ糖の消化管での通過の促進のみによっては説明できないことが示唆された.さらにこの胃全摘ラットにおいて増加したIRGが胃切後の耐糖能異常に関与している可能性も推測された.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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