糖尿病
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若年型糖尿病の臨床像と膵β細胞機能
上田 良成多々見 良三上田 幸生亀谷 富夫羽場 利博伊藤 清吾小泉 順二太田 正之宮元 進臼倉 教臣馬渕 宏竹田 亮祐
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1978 年 21 巻 10 号 p. 907-912

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抄録

27例のケトアシドーシスを伴って発症した若年型糖尿病患者の臨床像, および膵β細胞機能と血糖値の安定性との関連性, インスリン治療開治後の膵β細胞機能の推移を検討した。患者の平均年齢 (±SEM) は13.0±0.8歳で, 全例が現在インスリン治療を受けている.血糖値の安定性は8回の空腹時血糖 (FBS) の標準偏差 (SD) とアセトン尿の有無により決めた.FBSのSDは平均50.7mg/dlで, FBSのSDが50.7mg/dl以下でアセトン尿の認められなかった症例を血糖値安定群 (A群), 他を不安定群 (B群) とした.平均年齢, 発症年齢, インスリン治療期間と投与量, Cペプチド (CPR) は, A群で各々15.0±1.1歳13, 1±1.0歳, 1.3±0, 5年, 16.4±3.5単位/日, 1.62±0.47ng/m1, B群で11.6±1.1歳6.6±1.1歳5.0±0.8年, 35.5±7.2単位/日0.49±0.05ng/mlであり, A群はB群に比し有意に年長で (P<0.05), 発症年齢が遅く (P<0.001), インスリン治療期間が短く (P<0.001), 投与量が少なく (P<0.05), CPRが高かった (P<0.05).発症年齢のピークは2~3歳, 7~8歳, 11~12歳であった.糖尿病の発症年齢とCPRはFBSのSDと有意に負の相関を示し (各々P<0.05), 発症年齢が若いほどCPRは低かった.CPRが1.16ng/ml以上では血糖値は安定, 0.45ng/ml以下では不安定で, 膵β細胞機能が血糖値の安定性に重要であった.インスリン治療期間が短いほどCPRは高く, 治療期間が2年以上ではCPRが0.50ng/ml以下の症例が出現し, 膵β細胞機能は治療開始後約2年間は残存していると考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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