糖尿病の経過観察中, 突発性に難聴を合併した5例について報告するとともに, 糖尿病患者にみられる聴力障害についても若干の考察を加えた。5例の内訳は, 男性3例, 女性2例で年齢は25~60歳であった.1例を除いてコントロールは不良で, 糖尿病性網膜症と同時に, アキレス腱反射あるいは下肢振動覚の異常などの神経学的異常所見が認められた.難聴耳は全例片側性で, 平均聴力損失は22.5dB~Scale outで全例に耳鳴, その内2例には目まいも伴ったが, 目まいは数日で軽減ないし消失した.4例に治療としてステロイド剤を用いたが, 自覚症状発現から耳鼻科受診までの期間が7日, 2日と早かった2例は聴力の回復が見られた.一方, 治療開始の遅れた3例には聴力の回復が見られず, 未だ網膜症や神経学的異常所見がなくコントロール良好な者でも聴力の回復は見られなかった。