糖尿病
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糖尿病患者におけるインスリン低血糖に対する膵グルカゴン分泌の低下
豊島 博行吉田 隆司野中 共平垂井 清一郎
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1978 年 21 巻 3 号 p. 191-202

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抄録

正常者16例, 糖尿病者35例を対象とし, インスリン負荷試験 (ITT), アルギニン負荷試験 (ATT), 経ロブドウ糖負荷試験 (O-GTT) を施行し, 血漿免疫反応性グルカゴン (IRG), インスリン (IRI), 血糖の, 各種負荷試験における分泌反応を検討した.
ITTにおいて, 正常者の血糖値は負荷前86±3mg/dlで負荷後20分に最低値33±2mg/dlにまで低下し, 糖尿病者では負荷前142±10mg/dlで負荷後45分に最低値42土5mg/dlにまで低下した.また全例に低血糖症状がみられた, その時のIRG値は, 正常者が負荷前64±11 pg/mlで負荷後30分に最高値262±45 pg/mlを示し, 糖尿病者では負荷前43±4 pg/mlで負荷後60分に最高値137±21pg/mlとなり, 糖尿病者のIRG反応は正常者に比し有意に低い (p<0.01) ことが認められた.またITTの際のIRG反応を糖尿病者間で比較検討すると, 空腹時血糖値とIRG分泌反応との間に有意な負の相関が得られた.
糖尿病者24例において, O-GTTの際のIRI分泌反応と, ITTの際のIRG分泌反応との間に有意な正の相関が得られ, 膵A, B両細胞の障害の程度が平行する可能性が示唆された.
正常者6例, 糖尿病者20例に行ったATTのIRG反応は, 従来の成績に一致して糖尿病者がわずかながら有意な高反応を示した.このように糖尿病者においては, ITTとATTの際のIRG分泌反応が正常者と比較して逆の結果を示したが, その理由として, アルギニン負荷時のIRG反応には膵外性グルカゴンの関与している可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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