糖尿病
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Alcoholと脂肪酸によるTolbutamideの脱共役作用の増強について
勝又 一夫勝又 義直
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1979 年 22 巻 3 号 p. 453-459

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抄録

Tolbutamideがin vitroで白鼠肝mitochondriaのoxidative phosphorylationを脱共役することはよく知られているが, 100-150mg%の大量を要するため, in vitroにおける意義は疑問視されている.私は, tolbutamideの脂溶性に注目し, mitochondriaの膜の機能に影響を与え得る脂溶性物質との共存によってtolbutamideの脱共役作用が増強される可能性を推定した.本実験ではtolbutamideの脱共役作用に及ぼすpalmitate及びアルコールの影響をin vitro 70で白鼠肝mitochondriaを使用し酸素電極を用いて検討した.tolbutamideはDMSO, 0.25NN我OHで溶解した場合に比し, アルコールに溶解するとより強力な脱共役作用を示した。また0.1mMpalmitate及び0.4%アルコールとの共存下では10mg%tolbutamideが肝mitochondriaのRCI, ADP/Oを著明に低下させ0.1mMpalmitateと0.8%アルコールとの共存下では30mg%tolbutmideがRCIを1とし, ADP/Oを0にして完全な脱共役作用を示した.アルコールは電子スピン共鳴法による成績でmitochondriaの膜の流動性を変えることが報告されており, palmitateは膜を障害して脱共役作用を示すといわれている.したがって, これら二者の存在により, mitochondriaの膜に何らかの変化が起き, tolbutamideの作用が増強されたものと推定した.10-30mg%という, 従来報告されている100-150mg%より明白に少ない量のtolbutamideが肝mitochondriaのoxidative phosphorylationを本実験で採用した条件下で脱共役することが示された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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