糖尿病
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末端肥大症を伴う糖尿病患者にみられた下痢に関する2, 3の検討
斎藤 行世佐藤 恒明丸浜 喜亮菊池 仁
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1980 年 23 巻 12 号 p. 1109-1115

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抄録

末端肥大症を伴う糖尿病患者 (35歳, 男) に1年以上にわたる頑固な下痢が認められた.本症例の糖尿病は重症 (初診時空腹時血糖286mg/dl) でインスリン治療に抵抗した.下垂体摘除後も1日数回の下痢は不変であった.糞便脂肪は28.39/日と脂肪吸収障害を認めたが, 軽度の低コレステロール血症以外に栄養状態の低下はなく, 膵外分泌機能および血中VIPも正常であった.
消化管運動検査では, 胃排出能 (アセトアミノフェン吸収法) は明らかに促進しており, 上部消化管通過時間も20分 (ラクツロースー水素ガス法, 正常;93土41分, mean土2SD) と著明な短縮を認めた.また, 全消化管通過時間は34時間 (単一糞便-標示物質法, 正常: 54土12時間) と若干短縮していた.空腹時に経時的に測定した血中モチリンは異常な高レベルで変動を示し, テストミール負荷後にはやや低下した.
本症例の下痢の真の原因は不明であったが, 全消化管とくに上部消化管の運動亢進を介して発生していると考えられた.これは従来われわれの検討してきた糖尿病性神経障害による消化管障害とは機構が異なっていた.血中モチリンの異常高値が本症例の下痢に何らかの関係をもつかもしれない.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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