糖尿病
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家族性高脂血症 (WHO IIb型) を有し, 飲酒によりGross Hypertriglyceridemiaを呈した女子糖尿病の1例
清水 智江河原 玲子雨宮 禎子新城 孝道大森 安恵平田 幸正
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1980 年 23 巻 12 号 p. 1131-1136

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抄録

家族性高脂血症 (WHO丑b型), 女子糖尿病の1例に飲酒が誘因となって乳糜血清を呈するほどのgross hypatriglyceridemiaがみとめられたので報告する.
患者は61歳女, 家族に糖尿病, 眼瞼黄色腫, 高脂血症がみとめられている.30代より飲酒し, 46歳で糖尿病を発症し, 55歳からスルポニルウレア剤で治療された。59歳に糖尿病の増悪, アルコール性肝炎, 著明な内因性高トリグリセライド (TG) 血症を呈したため当センターにはじめて入院した.食事療法, 禁酒により糖尿病, 肝炎, 高TG血症は改善した.しかし高コレステロール (CH) 血症は常に持続していた.1971年1月頃から再度の飲酒, 食事療法の乱れで, 全身倦怠感とともにTG 2,961mg/dl, CH 736mg/dl, 乳糜血清がみとめられ第2回入院となった.入院時眼瞼黄色腫, 糖尿病性網膜症Scott II, 心肥大, 肝腫大があり超低比重リボ蛋白コレステロール (VLDL-CH) 647mg/dl, レシチンコレステロール・アシル・トランスフェラーゼ (LCAT) 活性は407.4uといずれも高値であり, 高比重リポ蛋白コレステロール (HDLCH) は11mg/dlと減少をみとめた.食事療法, 禁酒にてわずか1~2週間の経過でTG, LCAT活性, HDL-CHの正常化を認めた.
本症例は, 糖尿病に原発性脂質代謝異常を合併したもので飲酒により, 肝でのTG合成亢進のため生じたと推定された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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