1980 年 23 巻 2 号 p. 137-147
より長期にわたる生理的血糖制御を目的として, 人工膵β細胞より血糖連続測定装置のみを切りはなしたPre-Progmmmable Insulin Infusion Systemを作成し, 7例の新たにインスリン治療を開始する糖尿病患者に応用し, 中間性インスリン1日1回または速効性インスリン1日3回皮下注時の際の血糖制御効果を比較検討した.
人工膵β細胞より得たインスリン注入率とパターンを記憶した本システムにより, 健常者の血漿インスリンおよび血糖日内変動を再現することができた.この際血漿Cペプチドは常に低値を維持した.一方中間性インスリン皮下注時には血漿インスリン濃度は全経過を通じ軽度上昇したにとどまり, 食後の高血糖を認めた.したがって本投与法ではインスリン基礎分泌を補充するのみであると考えられた.この際の血漿Cペプチドは血糖上昇時に高値を示した.速効性インスリン1日3回皮下注により食後血糖制御は可能であったが, 大量投与の結果食後数時間に低血糖をもたらし, かつ夜間に高血糖を認めた.
血漿グルカゴン動態は, Pre-Programmable Insulin Infusion System使用時に健常人の日内変動に最も近い反応を認めた.
Pre-Programmable Insulin Infusion Systemと人工膵β細胞の両者の特徴を生かすことにより, 長期にわたる生理的血糖制御が可能となった。