糖尿病
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高CPK血症を合併した糖尿病性ケトアシドーシスの1例
棚橋 忍梶沼 宏川合 厚生石渡 和男
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1980 年 23 巻 2 号 p. 165-171

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抄録

糖尿病性ケトアシドーシスからの回復過程で, 一過性に著明な高CPK血症を呈した症例を報告する.症例は60歳の主婦で, 49歳糖尿病と診断されインスリン治療を受けていた.昭和54年1月12日頃より口渇, 多飲, 多尿, 全身倦怠感が出現し, 14日午後より意識障害があらわれた.15日朝昏睡に陥り, 夕方緊急入院した.入院時血圧は55/30mmHg, 四肢は冷たく, 体温は35QC以下であった.血糖は1672mg/dl, 血清ケトン体は陽性であった.少量インスリン持続注入療法 (Actrapid insulin 6U/hr) と生理食塩水による輸液を開始し, 16日朝にはほぼ覚醒した.入院時CPKは1181U/Lであったが, 16日は1710 IU/Lに上昇し, 18日は2888 IU/Lと頂値に達したが, 以後減少し, 入院後12日目に正常範囲となった.GOT, GPT, LDH, も5~8日目にそれぞれ最高180 IU/L, 96IU/L, 768Uと上昇を認めた.心電図上で心筋硬塞を疑わせる所見は認められず, CPKアイソザイムでMBの比率はきわめて小さく (1~2%), MMが大部分を占めていた (97%).筋炎, 外傷はなく, 筋注も行われておらず, 本症例の高CPK血症は骨格筋細胞の透過性充進によりCPKの遊出が増加したために生じたものと推察された・糖尿病性ケトアシドーシスに伴う高CPK血症の報告は少なく, また細胞膜透過性充進による高CPK血症を考える上で興味ある症例と考える.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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