糖尿病
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糖尿病患者における下肢閉塞性動脈硬化症
頻度, 危険因子, 他の合併症との関係
松田 文子葛谷 健
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1981 年 24 巻 12 号 p. 1225-1233

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抄録

糖尿病患者の下肢閉塞性動脈硬化症 (ASO) について検討した. 1426名 (男781, 女645) のうち, ASOは22例 (1.5%, 男17, 女5名) で, 平均年齢67土9歳, 40歳代までには0, 50歳代5例 (1.2%), 60歳代10 (3.0%), 70歳代以上7 (5.1%) にみられた. 間歇性破行11例 (0.8%), 虚血性壊疽11 (0.8%), 下肢切断7 (0.5%) が含まれた. 動脈閉塞部位は足背動脈10例 (46%) 膝窩動脈9 (41%), 大腿動脈3 (13%) で, 後脛骨動脈単独閉塞でASOと診断されたものはなかった. 18例 (82%) は両側動脈の閉塞であった. 壊疽はすべて虚血性壊疽であり, 同期間の全壊疽症例35例の31%を占めた. ASO (+) 群と, 性, 年齢を対応させたASO (-) 群および71歳以上のASO (+) 群において初診時空腹時血糖値, 肥満度, 治療方法には差がなかったが, ASO (+) 群では初診時未治療のものが多くかつその後のコントロールも不良のものの率が高かった. 高血圧, 喫煙, 高脂血症とASOの有意の関係はなく, 高齢ASO (+) 群ではこれらの頻度はむしろ低かった. 著者が直接診察した糖尿病患者306名 (男160, 女146) では足背動脈拍動欠損は15例 (4.9%)(男11, 女4) で, 全例50歳以上であった. 後脛骨動脈拍動は個人差が大きく若年者にも非触知例があり, 虚血症状との相関にも乏しかった. いずれの指標を用いても下肢ASOの頻度は欧米の統計に比して明らかに低率であった. 下肢動脈閉塞の指標としては足背動脈拍動が適当と考えられる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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