糖尿病
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糖尿病妊婦治療の指標としてのHemoglobin AI
大森 安恵嶺井 里美吉野 正代佐中 真由実横須賀 智子本田 正志河原 玲子平田 幸正
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1981 年 24 巻 4 号 p. 477-485

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抄録

糖尿病妊婦の治療の目標は, 代謝異常の完全正常化であるといわれている. 妊娠時のコントロールの指標として血糖とともにHbAIを測定した. 糖尿病妊婦28例を対象とした.1例を除いて27例は妊娠前からインスリン注射をうけていた。妊娠時平均年齢は28, 5歳, 糖尿病の罹病期間は平均6, 7年であった. 対照は健常女子20名非糖尿病妊婦123名, 化学的糖尿病妊婦14名, 非妊娠糖尿病90名であった. いずれのグループも平均年齢は, 27。5歳から30.1歳の間であった.
HbAIはIsolab社の簡易測定キットを用いて妊娠初期, 中期, 後期, 分娩後に測定した. 対照健i常女子のHbAIは, 7.0±0.6%(M±SD), 非妊娠糖尿病者のそれは10.7±2.8%であった. 正常妊婦でGTT正常型のHbAIは健常女子と差を認めず, 妊娠の経過によっても変化がなかった. 境界型を示すもののHbAIは, 妊娠後期でのみ正常型より有意に高値であった. 化学的糖尿病は, 境界型と同じ値を示し, 健常女子と有意差はなかった.
糖尿病妊婦では, 妊娠初期11.1±2.5%を示したが, 妊娠中期, 後期では有意に低下し分娩後再び増加の傾向がみられた. 糖尿病妊婦におけるHbAIの低下は, きびしいコントロールを反映し, 分娩後の増加は, コントロールが緩和され, 高血糖になった結果によるものと考えられた。すでに13例は分娩が終了しているが, 妊娠後期のHbAI値と生下時体重, 血糖と生下時体重との問には相関がみられた. HbAIが9%以下, 平均空腹時血糖100mg/dl以下, 平均食後血糖が130mg/dl以下を保った母体の子供は正常児に等しかった.
HbAIと食前, 食後の血糖をくみ合わせた検査結果は, 糖尿病妊婦のコントロールのよい指標となることを認めた。

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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