糖尿病
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糖尿病におけるアルコール性脂肪肝発生機序に関する実験的研究
生野 哲雄
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1981 年 24 巻 7 号 p. 705-714

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抄録

糖尿病病態下でのアルコール性脂肪肝の発生機序解明のため本実験を行った.150g前後のWistar系雄性ラットを用い正常 (N群), 糖尿病 (streptozotocin-induced diabeticrat: DM群) の各々をエタノール投与, 非投与群の4群に分け, 5週間飼育後, 生化学的ならびに組織学的検索を行った.
高脂肪食のみでは, N, DM群とも脂肪肝の発生を見ないが, エタノールの同時投与により, N, DM群とも脂肪肝発生を見た.その際, 肝中性脂肪, 血中遊離脂肪酸および肝ミクロゾーム分画の過酸化脂質の有意な増加を認めた.
一方, 14C4-palmitateによるkinetic studyではN群はエタノールによるVLDL-TG放出障害が確認できたが, DM群では明らかな放出障害を証明できなかった.しかし, Triton WR-1339の実験では, 両エタノール群ともVLDL-TG放出は有意に低下していた。また, エタノールはPHLAにはほとんど影響がなかった.
以上より, 正常ラットにおけるアルコール性脂肪肝の発生機序は脂肪酸動員の亢進, 肝での中性脂肪合成亢進, 肝からのVLDL-TG放出障害が示唆され, とくに放出障害には肝ミクロゾームでの過酸化脂質増加が一役を担っているものと考えられた.また, 糖尿病, すなわちインスリン欠乏状態下におけるアルコール投与の影響は, 末梢脂肪酸動員ならびに肝での中性脂肪の過剰合成が脂肪肝発生の主体をなすものと考えられ, 一部相対的なVLDL-TG放出障害も関与すると思われた.

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