糖尿病
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糖尿病患者の血清脂質および血清リポ蛋白とリポ蛋白リパーゼ活性
上田 幸生
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1981 年 24 巻 9 号 p. 877-890

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抄録

糖尿病患者の脂質代謝異常を明らかにするため, 糖尿病患者血清をアガロースゲルリポ蛋白泳動により, 正常 (正常群), IIa型 (IIa群), IIb型 (IIb群), III型 (III群), IV型 (IV群), の5群にわけ, 各々超遠心によるリポ蛋白分析, Postheparin Lipolytic Activity (PHLA) の検討を行った.超遠心によるリポ蛋白分析はHavelの方法に従い, PHLAの測定はKraussの方法に従った.
超遠心によるリポ蛋白分析の結果,
(1) 正常対照に比し, 正常, IIa, III, IV群はVLDL-chol/VLDL-TG比が高値を示し, IIb, III, IV群はLDL-chol/LDL-TG比が低値を示した.これより, 正常, IIa, III, IV群はchol-rich VLDL, IIb, III, IV群はTG-rich LDLが存在し, ともにVLDL-remnantの増加を示唆した.
PHLAの結果,
(1) 糖尿病各群の, H-TGL活性は正常対照に比し有意に低値を示した.LPL活性は正常対照と差を認めなかった.また, III群のH-TGL活性は, 他の糖尿病各群に比しても低値を示した.
(2) 正常対照, 糖尿病各群を含めた検討で, H-TGL活性はVLDL-chol/VLDL-TG比, LDL-TGと有意の負の相関を示した.
以上の成績より, 糖尿病患者ではH-TGL活性低下によるremnantの増加が認められる.また, 糖尿病のIII型高脂血症の一因として, 少なくともH-TGL活性低下に伴うremnantの増加によることが考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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