糖尿病
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糖尿病者における心筋梗塞の臨床病理学的研究
木村 満
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1982 年 25 巻 7 号 p. 785-794

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抄録

成人型糖尿病剖検例141例について, いかなる糖尿病例が心筋壊死巣を合併したのかを知る目的で検討を行なった.
対象は男109例, 女32例で, 死亡時年齢は平均66.1歳 (43~85歳) であった. 剖検所見より, 心筋壊死巣の有無により, 141例を3群に分けた. I群: 心筋梗塞に由来する, 明らかな範囲を持つ壊死巣を有する群 (45例). II群: 小壊死巣の散在のみを有する群 (33例).III群: 何ら壊死巣を有さない群 (63例). 3群間で男女比に差を認めなかった. これら3群と諸因子の関係を検討したところ, I群はIII群に比し, 糖尿病罹病期間が10年以上, 糖尿病発症より治療開始までが1年以上であった症例が多く (P<0.01), また高中性脂肪血症を呈したものが多かった (P<0.05). さらにI群には糖尿病性腎糸球体硬化症, 高度な冠動脈硬化症を有するものが多かった (P<0.01). しかし両群間に, 治療内容, 空腹時血糖レベル, 肥満, 常在性蛋白尿, 糖尿病性網膜症に関しては有意差を認めなかった. 血圧, 血清総コレステロール, 喫煙歴の3大冠危険因子については, 個々については3群間に差を認めなかったが, I群にはIII群に比し, いずれか2因子を合併するものが多かった (Pく0.05). II群とI群では, 糖尿病発症から治療開始までの期間に差を認めた以外, 臨床的, 病理学的に差はみられなかった.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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