糖尿病
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糖尿病ならびに非糖尿病患者の膵組織Pancreatic PolypeptideならびにInsulin量と生前の臨床像との関係について
田坂 仁正岩谷 征子井上 幸子丸茂 恒二平田 幸正
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1982 年 25 巻 7 号 p. 795-801

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抄録

糖尿病患者の剖検例における膵組織pancreatic polypeptide (PP) とIRI量を明らかにし, 非糖尿病症例と比較検討するとともに, 糖尿病患者の生前の空腹時血糖値の安定性との関係, 肝障害, 腎障害のそれらに及ぼす影響について研究した. 対象は糖尿病患者26例と非糖尿病患者19例であり, 剖検後膵凍結まで6時間の症例を扱った. 膵尾部または頭部を酸性エタノールにて抽出して膵PPならびにIRIを測定, 一部は抽出液をゲル炉過して分画に分け, IRIならびにPP, C-peptideを測定した. 空腹時血糖の安定性の指標として死亡前1年間の空腹時血糖15回の平均値の標準偏差 (SD) をとった. 成績は次のごとくである.
1) 膵抽出液のゲル炉過像 (Sephadex×G-50) ではIRIのピークに続き, PP, C-peptideのピークが出現した.
2) 糖尿病, 非糖尿病症例の膵尾部PP量は9.55±2.41μg/9 (平均値±SE), 7.71±1.52μg/gであり, 両者に有意差なく, 頭部においては糖尿病, 非糖尿病各々で16.86±5.51μg/9, 15.82±5.38μg/gであり, 同じく有意差はなかった. これらにおいて膵尾部よりも膵頭部の方がPP値は有意に高値であった (P<0.02).
3) 膵尾部IRIは糖尿病で1.26±0.19U/g, 非糖・尿病2.55±0.35U/9となり前者で有意に低く (P<0.01), 頭部では糖尿病1.14±0.27U/g, 非糖尿病1.60±0.23U/gであり, 糖尿病では低値であったが有意ではなかった.
4) 空腹時血糖の安定性との関係を検討すると, 膵PP量は一定の関係がみられなかったが膵尾部のIRIは0.5U/g以下の例において空腹時血糖のSDは98,161,104mg/dlと著しく不安定であった.
5) 糖尿病患者の腎障害の空腹時血糖の不安定性に及ぼす影響は特になく, 腎障害が膵IRI, PP量に及ぼす影響も特にないと考えられる.肝障害も膵IRIに特に影響はないが, 空腹時血糖の安定性には若干影響があると考えられる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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