抄録
インスリン依存性糖尿病を有する23歳の男子学生が, 恐れ・無気力などの強い情緒的不適応を示し, かつ高血糖と低血糖発作とを伴う代謝の不安定性をきたした.
これらの2つの状態はふつうの糖尿病治療のみによっては改善されえなかった.
ところが, これに加えて青年の心理を正しく認識したうえでなされたカウンセリングをとり入れた治療を行うことによりこれらの情緒的不適応と代謝の不安定性をはじめて是正することができたうえに社会的適応をも得られることがわかった.
これらの結果から, 糖尿病青年においては, 感情の良好な適応と糖尿病の良好な管理との間には密接な関係のあることがわかり, また情緒的不適応の改善と代謝の不安定性の是正にはカウンセリングが極めて有用でありうると結論される.