糖尿病
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糖尿病患者の長期経過観察
生命予後および死因に関する検討
佐々木 陽上原 ます子堀内 成人長谷川 恭一
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1982 年 25 巻 8 号 p. 915-922

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抄録

糖尿病患者の長期にわたる経過ならびに生命予後を検討することを目的として, 昭和53年から組織的なfbllow-upを開始した.対象は, 昭和35年以降当センターを受診し, 登録されている糖尿病患者1,850名 (男1,132名, 女718名) で, 昭和55年末までの平均観察期間は6.3年であった.
1) 生死の確認は受診中断者を対象に, アンケート調査, 市区町村役所への住民票の照会, 患者への直接連絡などを行った.その結果, 生存1,536名, 死亡313名が把握され, 生死不明は1名を残すのみとなった.
2) 平均年間死亡率は男3.11%, 女1.96%, また, 期待死亡数に対する実死亡数の比 (O/E比) は, 男1.74, 女1.56で, 男に過剰死亡が多くみられた.また, 初診時年齢の若いものほどO/E比が高くなる傾向がみられた.
3) 発病時年齢45歳未満, 初診時収縮期血圧160mmHg以上, 蛋白尿 (+), 空腹時血糖値200mg/dl以上, 2時間値300mg/dl以上, また観察期間中のコントロール不良のもの, インスリン治療群は生命予後が不良であった.
4) 死因は脳心腎血管疾患が最も多く, その内訳は脳血管疾患, 心疾患, 腎疾患の順であるが, 国民一般と比較すると腎疾患の増加がとくに著しく, 次いで心疾患, 脳血管疾患の順となる.また, 悪性新生物は全死因の1/4を占め, 肝がん, 膵がんの増加が著しい.また肝硬変の増加も注目されたが, これはわが国の糖尿病に特徴的な現象と考えられた.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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