糖尿病
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糖尿病性ケトアシドーシスに対するインスリン持続注入治療時の膵グルカゴン, 腸管グルカゴンの血中動態について
河原 啓森田 須美香松浦 省明吉田 泰昭土井 邦紘馬場 茂明
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1983 年 26 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

糖尿病性ヶトアシドーシスに対する治療としてのインスリン持続注入療法を用いてケトーシス時における血中膵グルカゴンおよび腸管グルカゴンの動態とその意義について検討した.
5例の糖尿病性ヶトアシドーシスの症例と1例の非ケトン性高浸透圧昏睡の症例にレギュラーインスリソあるいはアクトラピッドインスリン5U/hr~10U/hrの持続注入療法を施行し, 経過中の尿中ケトン体, 血糖, 血中インスリン, 血中膵グルカゴンおよび血中腸管グルカゴン濃度を測定した.
入院時の血糖値は333mg/100ml~985mg/100mlで, 生理的食塩水, リンゲル液で補液後, 5U/hr~10U/hrのインスリン持続注入療法を施行した.49.7mg/100ml/hr~105.0mg/100ml/hrの平均血糖下降率を示し, 尿中ケトン体は消失した. 注入開始2時間後の血中インスリン濃度は53.6μU/ml~291.1μU/mlを示した.
血漿膵グルカゴン値は, 87.8Pg/ml~660pg/mlを示し, 血漿腸管グルカゴン値は20Pg/ml~1,300Pg/mlを示した. これらはいずれも, 治療開始時高値を示した症例にのみ, 低下傾向がみられ, ケトーシスとグルカゴンとの明確な因果関係は認められなかった.
以上の結果, 糖尿病性ケトアシドーシスに対し, インスリン持続注入療法は有用であると考えられた.また, ケトーシスの成因に, グルカゴンの関与は重要であるものの, 全例が, 血中グルカゴン値の高値を示すわけでなく, 第一義的な成因はインスリンの作用不足にあるものと考えられた.

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