糖尿病
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空腹時血糖値を支配する遺伝子型と環境の相互作用に関する遺伝学的研究
古庄 敏行北沢 幸夫内田 哲也後藤 由夫柿崎 正栄
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1983 年 26 巻 1 号 p. 17-28

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抄録

空腹時血糖値を支配する遺伝子型と環境との相互作用に関する遺伝学的解析を試みるため, 北沢ら (1979) の資料を用い, 年齢群別, 時代別に血糖値の平均値, 分散, 分布の最低値と最高値および血糖値を支配する+遺伝子頻度を推定した. これらの推定値の加齢および時代への回帰分析を試みたところ,(1) 加齢への回帰係数で統計的有意水準に達するものは平均値および分散である. この場合, 一次回帰の傾向を示す. 分布の最低値と最高値および+遺伝子頻度ではほとんど有意な関係はみられない. しかし, このうち分布の最高値の観察値は期待値との差が有意で一次および二次回帰に適合しない. しかし, 数字の上から加齢にともなって大きくなる傾向を示している. (2) 時代への回帰係数で統計的有意水準に達するものは40~49歳群の平均値と分散のみであり, また, 分散と分布の最高値では回帰係数への適合性は不良である. また, +遺伝子頻度ではほとんど有意水準に達するものはみられない.
以上, 一連の傾向から, 加齢および時代の推移による高血糖群の増加は, すでに古庄 (1982) が報告したモデルから, 遺伝子効果が加齢および時代の推移に伴って大きくなることが予想される. ここで注意しなければならないことは本研究の結果から加齢のみ, あるいは時代のみの効果を推定することは困難である. なぜならば, 戦後の生活様式の変動は著しく, 例えば20歳群と60歳群では生活環境も著しく異なるので, 加齢の効果の中に環境の効果も含まれる. この点を解析するモデルも考案したが, 現時代でこのモデルで解析可能な資料がないので, この点は今後の問題としたい.

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