糖尿病
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糖尿病における小腸性アルカリフォスファターゼアイソザイムの出現と病態との関連
神田 勤
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1983 年 26 巻 6 号 p. 671-679

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抄録

著者らはすでに小腸性アルカリフォスファターゼアイソザイム (小腸性ALP) は, 遺伝的背景や脂肪摂取だけではなく, 糖尿病 (DM) の増悪と関連して出現することを報告してきた.本研究では遺伝的背景を統一し, 食餌性因子を除いた絶食状態で, 小腸性ALP出現を左右するDMの病態に検討を加えた.対象は血液型B又はOでABH分泌型に限り, 20歳以上の健常人 (N) 46例とDM教育入院患者 (DME) 170例, DMケトーシス (DM-K) 15例, DM性昏睡 (DM-C) 4例の入院時と入院治療2週間後の早朝空腹時血清を試料とし, ALP活性およびALPアイソザイムを分析した.小腸性ALP検出率はNで28.3%, DM-Eで51.2%, DM-Kで80%, DM-Cで100%であり小腸性ALPが出現する症例は, 未治療やDMコントロール不良の症例に多く, DM代謝状態の増悪とともに小腸性ALP検出率は上昇した.一過性に小腸性ALPを検出する群では, 小腸1生ALPを検出しない群に比し, Insulinogenic Indexが低く, 空腹時血糖値 (FPG) は有意に高かった.DM治療により両群間のFPGに有意差がなくなった入院治療2週間後には, 総ALP活性は低下し, 小腸性ALP検出率もDM全体で23.8%に低下し, N群と同率になった.
以.上より小腸性ALPの一血中への出現に影響する因子として, 遺伝的背景や脂肪摂取のほかにDMの増悪があり, かつDMにおける小腸性ALPの血中への出現は一過性で, DMの代謝状態の改善により消失することを明らかにした.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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