糖尿病
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超音波断層法を用いた糖尿病患者の残尿に関する臨床的研究
丸毛 和男藤井 暁鶴崎 正治佐藤 利彦関 淳一和田 正久
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1984 年 27 巻 1 号 p. 73-80

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抄録
糖尿病患者における残尿を超音波断層法により測定し, その異常と合併症などの糖尿病の病像との関連を中心に検討した.
対象は糖尿病患者116例, 健常者56例で, リニア電子スキャン装置を用い, 排尿後仰臥位にて膀胱の正中線での縦断走査及び横断走査を行なった, 残尿量の推定方法としては実測残尿量と縦断走査により得られた膀胱断面積との問に有意の正相関 (r=0.917, P<0.001) を認めたことより, 縦断、走査による膀胱断面積を指標とした.その結果, 糖尿病群では健常群に比し年齢に関係なく何らかの残尿を有するものが多く, 糖尿病群の内20例 (10.2%) に縦断面積10cm2以上の異常な残尿像がみられた。これらの異常残尿例は糖尿病の罹病期間の長期に及ぶもの, コントロール不良例に高率にみられ, 大多数はアキレス腱反射ないし下肢振動覚低下などの神経学的異常及び安静時心電図上R-R間隔の変動係数の低値 (2.0%未満) を示すものが大多数であった (両者とも20例中18例).さらにこれらの内, 約半数に無症候性の細菌尿 (中間尿定量培養105以上/ml) を認めた.一方, 高度な残尿例でも, 糖代謝異常の高度なものでは糖尿病のロントロールの改善に伴ない, 1~2カ月以内の比較的短期間で残尿量の著明な減少傾向を示す例もみられた.
以上より, 糖尿病患老における残尿のスクリーニング検査として超音波断層法が有用であることを示すとともに, 異常残尿例の大多数は何らかの神経病変を合併し, 無症候性細菌尿合併例も少なくなく, 代謝是正により残尿量の減少傾向を示す例もみられた.
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© 社団法人 日本糖尿病学会
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