糖尿病
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糖尿病患者における足背静脈血酸素分圧の上昇
糖尿病性神経障害の一徴候としての足の動静脈シャント量の増加
高井 孝二山本 邦宏斉藤 公司坂本 美一松田 文子葛谷 健
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1984 年 27 巻 10 号 p. 1059-1065

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抄録

足背静脈酸素分圧 (PvO2) と動脈血酸素分圧 (PaO2) との比PvO2/PaO2を用いて糖尿病患者のAVシャントの検討を行った.
正常人PvO2 40.3±7.8mmHgに比し糖尿病患者では合併症 (-) 群で38.6±8.6mmHg, 神経障害と網膜症腎症等のmicroangiopathyを合併した群では56.6±10.7mmHgと明らかな上昇を認めたが (p<0.001), 神経障害のみ (+) の群でも血管障害を認めないにもかかわらず55.8±8.3mmHgと有意の上昇を見た (P<0.001).
糖尿病患者のうちmicroangiopathyのない者について調べると, PvO2と下肢神経伝導速度との間に有意の負の相関を認めた.
さらに神経伝導速度に明らかな左右差のある患者では神経障害の強い側でのPvO2の上昇はより著明であった.
また心血管系の自律神経機能の1指標である呼吸性の心拍数の変動とPvO2の間にも有意の負の相関を認めた (p<0.001).
これらの成績はAVシャントの増加に神経障害が関与することを示唆するものである.
PvO2/PaO2比を用いた検討でも同様に神経障害との間に有意の関係が認められた. 神経伝導速度との間に見られる負の相関はPvO2をそのまま用いるより一層高度であった。
PvO2, PvO2/PaO2比の上昇は神経障害とともに出現し, その程度が神経伝導速度と逆相関することから, AVシャントは糖尿病性神経障害の存在を示す1つの所見と考えられる. またPvO2/PaO2比はPvO2に比しより良い指標になると思われる.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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