糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
新生Chinese HamsterにおけるMonosodium Glutamate誘発糖尿病に対する合成Trypsin Inhibitorの予防効果および治療効果の検討
酒井 芳紀渡辺 清建部 高明石井 兼央
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 27 巻 10 号 p. 1083-1093

詳細
抄録

Monosodium glutamate (MSG) 誘発糖尿病Chinese hamster (CH) に対する合成trypsin inhibitor (TI) の経口投与による糖尿病発症抑制の機序を, 膵に対する栄養効果, 膵内分泌, 肝の糖代謝酵素活性ならびに血漿脂質レベルより検討した. またTI投与開始時期の違いによる糖尿病の発症頻度, 重症度に及ぼす効果を検討した。合成TIとして [N. N-dimethyl-carbamyolmethyl 4-(4-guanidinobenzoyloxy)-phenylacetate] methansulfonate (FOY305) を使用した.
(1) FOY305を授乳期より, 生後4週目より, および生後11週目より投与を開始し検討したが, この3つの異なる時点のいずれの時期からの投与でも糖尿病状態を改善した. すなわちFOY305の経口投与には糖尿病発症の予防効果と治療効果のあることが明らかになった.
(2) FOY305経口投与により, 血漿インスリンならびに膵内インスリン含量はある程度保持され, hexokinase, pyruvatekinase活性およびglucose-6-phosphatase, phosphoenolpyruvate carboxykinase活性は正常に維持された. また膵内グルカゴン含量の上昇が抑制され, 血漿グルカゴン値, 胃グルカゴン含量は正常対照群より低値であった. 一方, 高脂血症の改善には無効であった.
(3) FOY305経口投与により糖尿病, 非糖尿病状態にかかわらずCH膵は肥大した. この膵肥大出現にはCCK-PZの遊離効果を介する機序が推測されるが, この中にB細胞の変性阻止や再生促進が含まれている可能性が考えられる.

著者関連情報
© 社団法人 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top