糖尿病
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NODマウスにおける膵島細胞膜抗体と補体依存性細胞障害の検討
鈴木 将夫
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1984 年 27 巻 10 号 p. 1095-1103

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抄録

NODマウス血清とマウス抗ラット膵ラ氏島細胞血清 (MARICS) における膵ラ氏島細胞膜抗体 (ICSA) および膵ラ氏島細胞に対する補体依存性細胞障害 (CAMC) を測定し, 比較検討した.
ICSAは125I-抗マウスIgG抗体を用いたRadioimmunoassay (RIA) 法によって測定した. ハムスターのインスリノーマ細胞 (In-111) を標的細胞としたICSA値はICRマウス膵ラ氏島細胞を標的細胞としたICSA値と有意な相関を認めた (r=0.79, p<0.01). 雌雄NODマウスにおけるICSA値の平均はいずれもコントロール雌ICRマウスに比較して有意な高値を示した (p<0.01). 週齢によるICSA値に関しては, 雌雄NODマゥスともに5週で低値を示しその後15週まで上昇し以後一定となる傾向を示した. 雌NODマウスにおいて, 糖尿病発症前後におけるICSA値に有意な変化は認めなかった.
CAMCは51Crを標識したラット膵ラ氏島細胞を標的細胞とし, 細胞障害性はその51Cr標識細胞から放出される51Crの放射活性を測定して算出した. MARICSのCAMC値は雌雄NODマウスそしてコントロール雌BALB/Cおよび雌ICRマウスに比較して有意な高値を示したが (p<0.01), 雌雄NODマウスにおけるCAMC値の平均はいずれもコントロール雌BALB/Cおよび雌ICRマウスに比較して有意差を認めなかった. 週齢によるCAMC値に関しては, 雄NODマウスはいずれの週齢においても5%以下なのに対して, 雌NODマウスでは20, 27週で高値を示すマウスを認めた. 雌雄NODマウスによる結果ではICSA値とCAMC値との間に相関を認めなかった。
以上より,(i) 雌NODマウスの糖尿病発症率は雄NODマウスよりも高いとされるが, ICSA値に差がなかった. (ii) 雌NODマウスにおいて, CAMC値が20, 27週齢で高値を示すマウスがいたことより, 雌NODマウスの糖尿病発症にCAMCの関与が考えられた. (iii) CAMCに関与しないICSAの存在も示唆された.

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