糖尿病
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長期経過観察からみた糖尿病性網膜症の危険因子
とくに血糖コントロールとの関係について
佐々木 陽堀内 成人長谷川 恭一上原 ます子
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1984 年 27 巻 10 号 p. 1115-1122

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抄録

糖尿病性網膜症の発症に対する危険因子を明らかにすることを目的に, 長期にわたって経過観察を行っている40歳以上発病の2型糖尿病患者1,604名 (男936人, 女668名) についてretrospectiveに解析を行った.
1) 網膜症の頻度には罹病期間が最も強く影響するが, 同じ罹病期間であれば平均空腹時血糖値が高いものほど網膜症の頻度は高くなることが認められた.
2) 網膜症 (+) 群と網膜症 (-) 群に分けて, 初診時以来の毎年の平均空腹時血糖値の推移を全期間について観察すると, 観察期間の長短に関係なく網膜症 (+) 群は網膜症 (-) 群に比して常に高値であり, その差はほぼ全期間にわたって有意であった.
3) 網膜症に関連するその他の因子として, 性別, 収縮期血圧, 蛋白尿, 血清creatinine, 治療方法との関係が見出されたが, 年齢, ECG所見, 肥満度, 血清cholesterol, 喫煙, 家族歴との関係は明らかではなかった.
以上の検討から, 糖尿病性網膜症の発症に嬉しては罹病期間に加えてコントロール状態が大きな役割を果たしていることが明らかであり, 積極的な血糖コントロールの意義が裏付けられた. また, 高血圧のコントロールも網膜症の発症・進展の阻止に有効であることを示唆された.

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© 社団法人 日本糖尿病学会
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