1984 年 27 巻 5 号 p. 615-619
細胞核にはインスリンを特異的に結合する受容体が存在すると考えられているが, この核へのインスリン結合に対する本邦3症例の形質膜インスリン受容体抗体の影響を検討した.3症例の血清は1: 4稀釈でヒト胎盤形質膜インスリン受容体へのインスリン結合を, 対照の46.8%, 56.7%, 53.4%にそれぞれ阻害した.胎盤可溶化インスリン受容体を用いた免疫沈降法により検出した受容体抗体の量は1例で特に多かった.ラット肝細胞核にインスリンは特異的に結合したが, 3症例の血清はいずれも核へのインスリン結合を阻害せず, 核へのインスリン結合は形質膜のインスリソ受容体への結合とは異なるものと考えられた.